コロナによる行動制限は緩和されましたが、週末ごとの台風で外出が自粛された9月でした。
当社SSの営業利益は、前年同月比700万円減少し、2,100万円となりました(8店合計・表1)。油外粗利が2,200万円増加したものの、経費が3,000万円増えたため吹き飛んでしまいました。
燃料油は販売量が122kl伸びました。口銭は減少に転じたでしょうか。
レンタカーは、8月に大量に新規客を取り込んだおかげで、9月以降のリピーターが積み上がりました。安定感のある成長を示しています。
車販も好調です。月200台を安定的に販売できるようになってきました(グラフ1)。
コロナ禍が「奇貨」となりました。九州、関東、北海道の空港前で展開していた直営レンタカー店の客足が2020年3月からピタッと途絶え、余剰レンタカーの売却に迫られました。
そこでそのスタッフを集めてプロジェクトチームをつくり、「グーネット」などを活用してSSとの連携で完売。その後、このチームを中古車の仕入れ・販促・在庫管理部門としました。
すなわち、成田空港前で借りていた広大なレンタカー用駐車場に中古車架装センターを設置し、売れ筋中古車の大量仕入れ、商品化、検索サイトヘの掲載、SSへの配送を引き受けます。
SSの業務は、問い合わせ客に対応し、現車を見せて販売するだけです。
ところで(表1)の車販粗利には業販、AA(オートオークション)出品、廃車処分などの収益も含まれ、一般小売りは9月は3,400万円となりました。
その内訳を(表2)に示します。
支払形態は、リースよりも現金・ローンの方が圧倒的に多いのですが、粗利を見ると大差ないことが分かります。
SS車販を拡大するなら、リースをラインナップすることが、まずは必須でしょう。
車販収益を拡大するもう一つの要因は、販売員の育成です。当社は現在15名の車販担当者を配備し、月間200台以上を売っています。15名のうち、月20台売るスタッフが10名、残り5名は新人レベルです。
当社の3年後(2025年)の販売目標は、月間500台。そのためには、月25台を売るスタッフ20名+新人5名、合計25名が必要でしょう。
現スタッフが順調にスキルアップするとして、少なくともあと10名を確保しなければなりません。
しかし、SS流の車販に長けた経験者は、おそらく世の中にいないでしょう。当社もこれまでは、SSスタッフとして採用した中から適性を見て研修し育ててきました。
ちなみに、当社の今のSSスタッフを、職務×採用ルート別に整理してみたのが(表3)です。
店長のうち1人は車販も兼任するなど、1人が複数の職務を兼任するので、はっきり区分できるものではありませんが、概要は分かります。
表3を見ると、一般募集で採用したのが19名、このうち6名が車販担当に就いています。
ここ2年の募集活動に限ると、一般募集で採用したのは30名。繰り返し募集広告を出し、毎日のように面接選考してきました。
そして20名が退職し、10名が現在勤務してくれています。
このうち、車販担当は2名です。いまだ「新人」の域を出ません。他の8名は残念ながら車販の適性がないと思われます。
5名が店頭接客を、3名がフロントを担当しています。
つまり、30名を採用し、かろうじて2名が車販業務に就いているという現実に直面します。
ということは、10名の車販担当者を確保するには、150人を採用することになります。
1人当たりの採用コストが20万円として、3,000万円の募集経費、そして、気が遠くなるような採用過程を要します。今のこのやり方を、抜本的に変える必要がありそうです。
以前にも述べましたが、当社は昨年、今後の生き残りの重点商品を「車検」と定めました。
顧客満足度を高め、リピート率を向上させ、車検を軸に顧客との関係性を深めようという狙いです。
その一方で、店長たちからは車検販促費の負担を軽くしたいとの要請がありました。今年1月から思いっきり削減することにしました。
その途端、毎月の車検台数が見事に落ち込んでしまいました。2021年まで前年比120~140%で伸びていましたが、今年は良くて前年並み、4月は前年比68%にまで落ち込んでしまったのです(グラフ2)。
もう我慢できません。
リピート率が改善されたかどうかは2年待たなければ分かりませんが、このまま2年間も指を咥えているわけにはいきません。
そこで5月から、私が陣頭指揮を執り「車検ルネッサンス」プロジェクトを推進しました。
その結果、ようやく9月に前年比113%の成果を上げ、胸を撫で下ろしているところです。
実施したことは、販促活動と店頭活動の復活再生です(表4)。
まず販促活動から。
ターゲットは商圏客およびSS利用客です。特に商圏客への販促活動は費用がかかり、営業利益を至上とする店長には、「悪の根源」に見えます。
しかし、効果も大きい。これをやめてしまうと、コストの削減効果以上に車検収益が減少してしまいます。
次に店頭活動です。
昨年「当社は車検でいくぞっ」と宣言したにもかかわらず、実は、SS現場にはあまり響いていませんでした。
彼らの関心は「車販」に向いていたのです。
なにしろ毎日のように車を買いたいと問い合わせがあり、お客様との商談アポイントがあり、納車に来店されるお客様も現れます。しかも1台売れば15万円以上の収益を得る。
店長や車販担当者だけでなく、すべてのSSスタッフが「車販ファースト」になっていました。
一方で、車検は、コールセンターが問い合わせを受け付け、クロージングし、SSに送客してくれます。商圏販促を強化すればするほど、車検は「天から降って湧いてくる」ものになっていました。
この状況下で商圏販促を縮小したわけですから、当社SSは自滅に陥る一歩手前に来ていたのです。危ないところでした。
商圏販促が復活した今、どうしても復活させたかったのがもう一方の車輪、店頭活動にメスを入れています。
SS来店客のうち、約30台に1台が毎月車検満了を迎えます。
この車検見込客にアプローチし、説明して申込書を獲得するスタッフに、当社は「車検名人」という資格を与えています。
車検見込客に対する販売手順は完全に確立されており、そのとおりに行動すれば、必ず40%以上が成約します。逆に、この手順をマスターしていないスタッフが接客すると、10%も獲得できません。
30分の1しか存在しない貴重な商談機会を、訓練を受けていないスタッフが潰してしまってはいけません。
そこで当社は、各店に3名以上の車検名人を配備し、車検名人だけが車検を販売するようにしたわけです。しかし、この制度が、いつしか形骸化。
車検見込客が来店したことを車番認識システムが判別し、腕時計型デバイス「コールウォッチ」でリアルタイムに伝えます。
にもかかわらず、これを無視したり、新人に行かせたり、行っても手順どおりの行動をしません。あろうことか、コールウォッチを装着しないことが常態化。聞けば、「壊れてます」「どこかにあるはずです」…。
すっかり「受け身」根性、「クルマ屋」根性に成り下がっていました。SS販売員としての気概も、車検名人としての責任感もありません。
8月から新生・車検名人育成プログラムを発足させ、以下を実施しました。
6店のキャンペーンが終了しましたので、結果を(表5)に示します。