ページトップへ戻る

増田信夫の「油外放浪記」

「月刊ガソリンスタンド」2021年7月号掲載

七転八倒の
鈑金塗装事業に曙光

ギネス連続更新がついにストップ

当社直営SS(既存6店)で16カ月間続いていた営業利益の連続更新記録が、とうとう5月で途絶えてしまいました(表1)。

油外粗利は前年比1,400万円伸びたのですが、経費が1,500万円増加しました。そして何より、燃料油粗利が960万円も下落した。

もっとも昨年5月は新型コロナの第一波。緊急事態宣言に驚いたSS業界が一斉に値取りに走ったため、思いもよらない高マージンを得ることができました。
でも、これはSSの努力とは関係ない、瞬間的な「天の恵み」です。 総粗利に占める燃料油粗利の割合を、人間の体脂肪率に例えてみます。

2年前の5月、当社のSSは7%と、非常に筋肉質だったのです。昨年は20%にまで脂肪太りしました。
そして、今年5月はまだ11%。 表にはありませんが、人時生産性も下がっています。2年前は5,739円、今年は5,017円。どうやら当社のSSは、燃料油バブルの緩みから、まだ本調子に戻り切れていないようです。

新規2店は明暗が分かれ始めた

今年オープンした2店舗の5月実績を見ます。 3月は車検需要のおかげで両店ともに黒字でしたが、4月、5月と赤字が続き、累計赤字は合計2,300万円となりました。計画値は、▲2,500万円ですから想定内ではあります。

しかし、両店の使命は「オープン半年以内」イコール「7月までに黒字化せよ」です。 果たして、このままでクリアできるのか、やや心許なくなってきました。

そこで両店舗のこれまでの営業実績を「グラフ1」にまとめてみました。

新百合ヶ丘店は3月の好調を、何とか維持しています。しかし、1カ月先輩の小田原東IC店は、3月をピークに下り坂。

新百合ヶ丘店の大誤算は、燃料油販売量だったのですが、じわじわ増販し、ついに小田原東IC店と並びました。
つまり、来店客数はほぼ同じであるにもかかわらず、油外粗利や人件費効率に大きな差がついてしまいました。

何を売っているのか。グラフ2は、5月の両店の油外粗利構成です。
レンタカーで、新百合ヶ丘店は380万円稼いでいるのに対し、小田原東IC店は、わずか40万円。10倍もの差がつきました。

レンタカーは、新人アルバイトが運用できる最も生産性が高い商材です。これが人件費効率の差となり、営業利益の差となったことが分かります。

2018年秋に新設オープンした堀之内店が半年間で黒字化したのも、最初からレンタカーがブレイクしたからです。

車検整備や車販は、店や商品が認知され、信用を得る

のに時間がかかります。スタッフの育成にも時間がかかります。 グラフ1を見ると、新百合ヶ丘店の黒字化は、射程圏内に入ったと見ていいでしょう。
一方で、小田原東IC店は郊外立地のため、肝心のレンタカーがスロースタートです。このまま放置すれば、累積赤字が積み上がるだけ。かくなる上は、車販と車検のテコ入れをしなければなりません。

そこで、以下の施策を打つことこ決めました。
➊リフト2基を増設。
➋車検スキルに長けたメカニックを2名増員。車検キャパシティを増やします。指定工場資格の取得も狙います。
➌車販スタッフを1名増員。車販25台/月を目指すため、有能な販売担当者を配備します。

以上により車検で350万円、車販で200万円、計550万円/月の粗利増加を図ります。コストも250万円増えますが、利益が300万円増えますので、赤字解消。年間営業利益1,800万円の計画です。

車検キャンペーンの結果報告

さて、今年も1~4月の4カ月にわたり、恒例の全店一斉車検キャンペーンを実施しました。
3月の車検需要期をターゲットに、最大限の収益を確保して年初に弾みをつけ、同時にSSスタッフの販売スキルを研ぎ直すことが目的です。

その結果をご報告します。
残念ながら、昨年に続き、今年も目標を達成できませんでした(表2)。

目標がやや高すぎたでしょうか。既存6店の入庫台数合計は、前年の120%成長。新規2店も対目標170%と大健闘。
彼らの努力に報いたい気持ちをぐっとこらえ、SSスタッフたちが楽しみにしていた温泉旅行は、今年も持ち越しとなりました。

くすぶり続けた鈑金塗装(BP)事業への野心

今回は久しぶりに、当社の板金塗装(BP)事業について述べます。
最初に自社工場を作ったのが1998年。古いプレハブ事務所を改装した簡易工場で、設備も技術もアマチュアの域を出しませんでした。数年間試行錯誤をしましたが、事業ベースに乗るほどの注文はとれず、あえなく撤退。

以後しばらくの間、BPは、取次・外注の時代が続きます。再び自社工場を持ちたい、という欲求が起きたのは2010年頃。

当社は2008年からレンタカー事業に乗り出しましたが、市場ニーズに支えられ、横浜圏内だけで500台以上のレンタカーを運用するようになっていました。

レンタカー台数が増えると事故も増えます。毎月何台もの修理を外注しているのを見るにつけ、「これが内製化できれば…」と思っていました。

そして、2015年、当社は平塚SSの隣地に中古車展示場を設けました。約200坪の敷地に軽自動車を50台展示できます。値頃感のある中古車を、オークションで毎月20~30台落札し、見栄え良く商品化したい。

「自社工場があればなぁ…」そう思っていたところ、ちょうどいい物件が舞い込んできました。本社から車で5分の工業団地、とある工場施設跡を借りることができました。ここに約1億円の設備投資、職人を5名採用し、2017年、晴れて、BP事業へ本格参入しました。

SSの初年度赤字6,000万円。窮地に立たされた

と言っても、入庫するのは当社のレンタカーや販売用車両の補修がほとんど。SSからは「コストセンター」と見られ、採算度外視の「言い値」で作業していました。

これでは投資回収はおろか、真っ赤っ赤のお荷物事業です。そこで、工場も独自に一般営業してみることにしました。
しかし、当工場の立地は工場地帯。前面道路は車1台がやっと通れる路地。店頭看板による集客やドロップイン(飛び込み来店)を期待できません。そこでホームページで集客を始めました。ここに至り、ついにBP「ド素人経営」が露呈します。

私の知見では、まったく歯が立ちません。結局、最初の1年は6,000万円(月間500万円)の大赤字(表3のA)。

幸いSSの業績が好調でしたから、会社全体としてはプラスです。しかし、SSが必死に稼いだ利益を「社長の道楽で食い潰している」と見られるのは心外です。何とかして、この袋小路から脱出しなければなりません。

何としてもBPを事業化する

工場スタッフは「SSの仕事は儲からない」と言い、SSスタッフは「外注した方が安い」と、両者の言い分は平行線をたどります。2018年、私は次の施策を打ちました。

➊社内案件は受注しない。
➋表通りに受注拠点(鈑金ショップ)をつくり、直販する。
➌損害保険会社に営業し、鈑金案件を紹介してもらう。

もともと、社内のレンタカーや車販ビジネスのバックアップ(下請け)として設立した工場ですが、方針を180度転換。自ら集客し月間150台、さらに、損保会社経由で月間40台を受注しようという目論見です。
鈑金ショップ分のコストが増加しますが、試算すると年間5,000万円の営業利益が期待できます。

勝算はありました。
まず鈑金ショップは、仲町台SSの斜向かい、当社直営の車検工場の隣で営業していたコンビニが撤退すると聞くや、いち早くその跡地を借り受けた物件があります。当面、車検工場を拡充するために改造しましたが、3月以外はほとんど稼働しません。そこでここを鈑金ショップにしようと決めました。横浜の住宅地の駅前交差点に面する好立地です。
また当時、当社SSには年間1万台の車検入庫がありました。その自賠責保険は4社の損保会社と取引があり、多少のお願いは聞いてくれる取引量でした。

さて、新体制づくりに丸1年をかけ、2019年から営業再開しました(表3のB)。

粗利益が月間400万円改善。しかし、店舗費・販促費・人件費が増加したので、まだ赤字です。
翌2020年。世の中はコロナショックが吹き荒れましたが、BP事業は堅調(表3のC)。入庫台数は月間120台、前年比10%増です。損保会社も月間17台を紹介してくれました。2017年と比較すると、入庫台数は2倍、粗利益は3倍です。

しかし、まだ赤字。ただ、損益分岐点突破が現実的になってきました。 そして、2021年。月間入庫台数はついに150台を超え、粗利益は1,000万円を超え始めました(表3のD)。

ついに今年5月、BP事業が単月黒字となりました(表3のE)。苦節4年、感無量です。

LED看板のヘタウマ川柳が支持される

ここに至るまでに実施してきたことをご紹介します。
➊インターネット販促費を月額180万円まで増額しました。
➋鈑金ショップで接客・見積もりするスタッフを、女性中心にしました。
➌店頭にLED看板を置き、毎週メッセージを更新しました。

特にLED看板は思い入れが深いので、詳しく述べます。
私は動きのある看板が大好きです。注目度が全然違います。昔からノボリやフラッシュライトなど、動きや光で目を引く広告物に注目してきました。

なかでも近頃、その絶大な効果に注目しているのは、動いて光るLED看板です。随分明るくなり、安価になってきました。数年前より当社は全SSに大型LED看板を設置しています。これが店頭販売活動を力強く支援しています。

そこで、BPショップにもLED看板を設置しました。いつでも動かせるように、軽トラックを改造し荷台に搭載しています(写真1&2)。

何しろ、前面道路は片側2万台/日が通行する交差点。仮に、信号待ちで15%がLEDの光と動きに目を留めてくれれば、月間9万台(年間100万台)が店のメッセージを見てくれます。

問題はコンテンツ。同じメッセージだとすぐ飽きられます。 そこで鈑金サービスの紹介に織り混ぜ、社員が作ったヘタウマ川柳を毎週更新しています。

信号待ちのドライバーを観察してみました。ニヤニヤして指差したり、スマホを向ける人もいました。SNSにも投稿されているようです。
当社のBPショップが地域に支持される一助になっていることは間違いありません。

《BPショップのLED看板 メッセージ2021年5月末》
「ニコニコ板金館は車のキズやヘコミを修理してみんなをニコニコにします!」
「キズやヘコミでお困りの方は「ニコニコ板金館」で検索!」
「修理期間中の代車が無料!」 「9時~19時まで営業中!」
*ニコニコ川柳*
「ガッキーが結婚したので休みます」
「梅雨入りで天然パーマみだれうち」
「為せば成る逃げるは恥だが役に立つ」
「ガッキー&星野源ロスが激しいですね!今日も元気にいってらっしゃい!」