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増田信夫の「油外放浪記」

「月刊ガソリンスタンド」2020年10月号掲載

レンタカーや車販が伸び
人材採用の好機がやってきた

8月も営業利益は堅調

今年の夏も記録的な暑さでした。 マスクの着用も相まって、例年以上に暑さを感じました。幸いにして当社SSスタッフはコロナにも感染せず、熱中症にもかからず、無事、8月を乗り切ることができました。

さて例によって当社SSの8月の実績を示します(表1)。

6店合計の営業利益は4,000万円を超え、月間ギネスを3ヶ月連続更新中。嬉しい反面、コロナで苦しんでいる業界や事業者様のニュースを見るにつけ、申し訳ない気持ちになります。

前年同月と比較すると、レンタカー以外は全て増収しました。 燃料油販売量は微増ですが、口銭はいまだ高止まり、油外粗利も、いわば計画通りです。

コロナの影響でレンタカー需要が激減すると予測し、他の油外商品でカバーしようと計画したのは5月のこと。レンタカー台数を大きく減らした一方で、車検、車販、そして車検客に対する定期点検を強化しました。
つまり、レンタカー粗利が減少したのは想定内。 これを他の油外販売でカバーできたのは、SSスタッフ諸君の検討の賜物です。

レンタカーは旅行観光客の構成比が明暗を分けた

さて、先月号の本稿で申し上げたとおり、国内レンタカー業界はコロナ禍の影響が大きく、いまだ回復の目処が立っていません。

しかし地元生活圏需要をターゲットとするSSレンタカーは、6月以降、完全復旧しました(グラフ1)。かくも早く復旧するとは、嬉しい誤算です。

当社がレンタカー台数を減らしたのは、観光需要が当面復旧しそうにないことが理由です。それに対する分を減車しました。

当社SSは、生活需要のみならず大手レンタカーチェーンがターゲットとしている観光需要の吸引をも行うものでしたから、そのための車両ラインナップに力を注いでいたわけです。

表2は、SSレンタカー、大手レンタカー、当社SSレンタカーの ターゲット構成比のイメージです。

このうち、旅行観光需要がコロナ影響によりほぼ壊滅。復旧まではしばらく時間を要します。
-というわけで、当社は現在、SSレンタカー本来の「生活レンタカー」シフトに戻っています。

空港立地レンタカー店にも一筋の光明

ところで当社は、SS兼業レンタカーと別に計7店のレンタカー専業店を運営しています。 空港前立地の店舗が多く、コロナの影響をもろに受けました(グラフ2)。

専業店は損益分岐点が高く、利益を出しにくいのが特徴です。
当社は法人、特に損保会社への営業努力が徐々に実を結び、昨年は月間平均9,000万円(7店合計)の売り上げを計上しました。営業利益は年間1億円に迫り、今年は1.5億円が確実と目され、絶好調だったのです。あの日までは・・・。

今年2月頃から、急速にインバウンド(海外からの渡航)が消滅していきました。次いで、国内便も激減。おかげで緊急事態宣言が発令された4月、専業レンタカー事業部門は2,000万円を超える赤字を出してしまいました。

あまりの急激な変化になす術もありません。
専業店は兼業店と異なり、店舗家賃や人件費など固定費が丸々かかります。レンタカーの落ち込みをカバーする商材も持ち合わせていません。

まずは出血を止めることから始めました。
インバウンドが多くて閑古鳥が鳴いていた成田空港店と関西空港店を休業しました。 次に7店で820台あった車両のうち、約250台を処分-。オークションに出品したり、SSで販売しました。

このままどこまで落ち込むだろうと心配しましたが、旅行観光需要が蒸発しても、幸い生活レンタカー事業と損保代車需要は残っていました。売り上げ半減で下げ止まったのです。
つくづく「ニコニコレンタカー店で良かった」と思います。

聞いた話ですが、中国系インバウンド客専門のあるレンタカー事業者は、500台規模で車両を保有していましたが、あっという間にリース料の支払いに行き詰まり、3月早々に倒産したとのこと。

「1本足経営」は効率的かもしれませんが不安定。当社は他事業部門の収益、人、自動車販売機能などがあったので、今のところ倒産や撤退を免れています。

コロナ禍は車販のチャンス

コロナ禍の中、当社SSで伸張著しいのが「車販」です。
販売台数は前年比倍増が続いています(グラフ3)。

当社はコロナ後、数百台のレンタカーを販売用商品に転用したため、その在庫処分が喫緊の課題となりました。SSとしてもレンタカーが開けた穴を何としても埋めたい、と言う強い危機感が生まれました。

世間も変わりました。
公共交通機関を利用するより、車で移動する方がはるかに感染リスクが少ない。つまり、車販需要が増加するかもしれないとの見立てをしました。

そして本社も、新車リースはもとより中古車販売の商品力強化、インターネットなどによる告知を強化しました。

消防法が緩和され、SS店頭で公然と車を展示できるようになったことも大きいでしょう。 そしてもう一つプラス要因がありました。レンタカー専業店を休業、縮小したことにより、余った人材を車販に活用できたのです。

当社は創業以来35年間、人員整理(解雇)をしない方針を貫いています。これまでも幾度か経営危機に見舞われましたが、役員の給与カットや社員の賞与カットなどで凌いできました。

今回も、雇用の継続を希望するスタッフ(アルバイト含む)は1人も解雇していません。仕事がなく自宅待機をせざるをえないスタッフもいますが、助成金などを活用し、従来通りの給与を支給しています。

そこで各地の専業レンタカー店から約10人を選びました。横浜本社への異動辞令を出し、今年6月、車販支援のプロジェクトチームを結成しました。 この面々が思わぬ戦力となっています。

一石二鳥の配置転換

彼らプロジェクトチームのメンバーは、自動車セールスは素人です。しかし中古車を美化したり架装して商品化し、写真撮影してネットに掲載したり、6ヵ所のSSに現車を運搬するなど役割分担をしています。

こうして6ヵ所のSSと、7ヵ所の専業店から拠出された余剰レンタカーは、6月までに売り切りました。並行してオークションや業販から、中古車仕入れを強化しています。

店頭、ネット、コールセンターにお客様が現れたらSSが販売行動を起こしますが、その前段階の仕込み(商品作り)は、SSが片手間でできる仕事ではありません。彼らのおかげで中古車の仕入れ台数、販売台数は一桁上がりました。

その一方でレンタカー専業店はどうなったでしょう。
車両の削減や人の異動などで、月間3,000万円以上をコストダウンできました。売り上げが半分になっても黒字が確保できるようになり、やれやれです。

今なら優秀な人材が選び放題

当初は配置転換によって赤字の解消と中古車の販売基盤を拡充したわけですが、現在、全国的に人の採用が極めて容易になっていることをご存知でしょうか。

「コロナ倒産」「コロナ解雇」といった悲痛な声があふれ、マスコミ報道されています。片一方では、「コンビニで100人の応募があった」と言うニュースも見ました。

ニコニコレンタカーでは「ニコJOB」と言う求人支援サービスを行っています。求人媒体を大量一括購入して募集費用を安価に抑えるとともに、多数の募集媒体を併用することで求人効果を高めています。

従来から多くの店が社員やアルバイトの求人にニコJOBを活用していますが、コロナ禍で劇的に応募件数は増えています。

グラフ4は「ニコJOB」利用SSの平均応募単価(応募1件あたりのコスト)の推移です。5,000円台まで下がってきました。

応募件数が多ければ、優秀な人材にあたる可能性も高まります。そして、人材次第でSSの収益性ががらっと変わる事は自明です。この好機がいつまで続くか分りません。先手必勝。当社SSは、整備士、車販経験者、オークション落札経験者など、20名以上の募集を開始しました。