足を引っ張っていた当社堀之内店が、経営に貢献するようになってきました。
昨年1月はまだ生後3カ月のヨチヨチ歩き、800万円を超す大赤字を出した同店ですが、今年は20万円の黒字を計上しました(表1)。
店長は「今期はしっかり黒字が出ます」と断言するので、今後の見通しも立っているのでしょう。既存5店もそれぞれ増収したので、1月の全店実績は、昨年は98万円の赤字でしたが、今年は1,200万円以上の黒字となりました。
令和を迎えて最初の年始に幸先よく発進できたのは、素直に嬉しく思います。
営業利益を支えるのは油外商品です。
油外商品はいろいろありますが、当社が重点商品に据えているのは車検、車販、レンタカー。
しかし、その取扱高の構成は時間経過で変化しています。
グラフ1は、5年前と現在の比較です。それぞれ伸びています。 「稼ぎ頭」は今も昔も車検です。 5年前の年間粗利は2.5億円でしたが 、昨年は3.7億円。今年は4億円に達するかもしれません。
車販は、「新車リース」を投入したことにより、1億円から2.5億円へ著しく伸びました。一時は、車検を追い抜く勢いでしたが、ここ2年間、伸びが止まってしまいました。
そうこうするうちに、伏兵レンタカーが昨年、一気に車販をかわし、年間3億円を稼ぐ商材に急成長。これは販売の難易度に関係します。
レンタカーは 、「人」の能力と関係なく「仕組み」を整えるだけで面白いように伸びます。2017年頃に発見した「Nメソッド」を各店に投入したことにより、桁違いの売上増、利益増を果たしました。
車検は国が営業してくれる商品ですから、 販売は「仕組み」が8割です。あとは、所定の手順を訓練さえすれば、アルバイトがどんどん売ります。
問題は車販です。
これほど属人的な商品はないかもしれません。適性のありそうな担当者を見い出し、各店に配備し、知識、スキル、経験を積ませ、結果が出始めたと思ったら、他社に引き抜かれる、病気になる、交通事故に遭う・・・そして、元の木阿弥、堂々巡りをしています。
「5店で2.5億円」は「属人性」の壁なのかもしれません。「属人性」に頼らない車販ビジネスの方法論を模索していますが、なかなか決定打を見い出せずにいます。
前年比120%の成長を続け、油外の35%を占めるのが車検です。
この勢いを維持するため、今年も1月から全店で車検キャンペーンを実施しています(表2&画像 1) 。
ちょうど3月の車検需要期に向け、販売対象客数も多く、活動成果が現れやすい時期です。ですからこの機に、販売担当者のスキルを研ぎ直します。
というのも、場数を踏んだベテランほど、効率化という名の「手抜き」が進んでおり、受注率が落ちるのです。包丁も使ううちに切れ味は鈍くなりますが、同じように販売手順も次第に錆びるので、ピカピカに研ぐ必要があるのです。
毎年研修の受講を義務づけ、正しい手順に補正した上で、実践に投入しています。
例年、車検キャンペーンの期間は1~3月としていましたが、今年は4月まで延長しました。
販売担当者はどんどん売りますが、ともすれば、車検処理のキャパシティを超えて売ってしまうからです。 販売担当者は、もっとキャパを増やしてくれないと困ると言います。しかし、整備士は、「残業時間がハンパない」と嘆きます。
キャンペーン期間が3月までだと、4月に車検が満了する車も無理やり3月中に入庫させようとするので、4月までのキャンペーンとしたわけです。
これが一般小売り業と決定的に違う点でしょう。あらかじめ商品を仕入れ、在庫を右から左に販売すれば済む、というものではありません。
車検に限りませんが、ほとんどのSS商品は在庫できません。いくら販売力を高めても、人や設備の処理能力以上に提供することはできないのです。
車検の場合、整備士、リフト、工具、代車、車両一時保管場所などがキャパシティを制限します。キャパが少ないと、みすみす販売チャンスを逃してしまいます。 しかし、ピーク時期に合わせて人や設備を用意するわけにもいきません。 その兼ね合いが実に難しいと毎年悩んでいます。
以前、こんな話を聞いたことがあります。
「アメリカ人が友人に持ちたい職業」のベスト3は、弁護士、医師、整備士だと言うのです。
日本での整備士の地位は、はるかに低く見られていると感じます。整備士になりたい人もどんどん減少していると聞きます。
しかし、少なくとも当社は、整備士をできるだけ厚遇したいと考えます。 たとえば、整備士がほとんどの時間を過ごす工場内に、いまだ冷暖房設備がありません。夏は酷暑、冬は極寒の吹きさらし。台風が来れば、雨・風・埃(ほこり)が舞う中での作業です。
SSがセルフ化したおかげで、 そのスタッフは、必要な時以外は冷暖房の効いた店内で待機したり商談に集中できるようになりました。車番認識システムがコールした時だけ、外に出て声かけしますが、ほとんどの時間は快適な環境下で過ごせます。
整備士の労働環境に比べると雲泥の差。試しに、工場に冷暖房を設置するのにいくらかかるか、見積もりをとってみました。直営5箇所で5,000万円もかかりません。仮に、10年間耐用したとして、1工場当たり月額10万円以下です。意外に安いので、導入してみようと考えています。
話がそれました。 当社の整備工場の設備、陣容、そして車検の閑散期(昨年1月)と繁忙期(昨年3月)の労働時間を整理してみたのが(表3) です。
この表中で「港北工場」とは、仲町台店とセンター南店の両店共有の整備工場です。 仲町台店の向かい、センター南店から1.5kmの場所にあります。他はSSと同じ敷地にある併設工場です。
全店合計でリフト13基、整備士22人。
車検入庫は、閑散期906台、繁忙期1,465台。月間仕事量が突然1.5倍に増えます。 そのしわ寄せは、整備士の労働時間、とりわけ残業時間に及びます。残業時間は閑散期の1,102時間に比べ、繁忙期は2,176時間。2倍を要しました。
もっともこの労働時間は、車検業務だけに費やされるものではありません。
整備士も会議や打ち合わせをするし、部品の発注や事務作業もあります。休憩もとれば、トイレにも行きます。入庫する車両も車検だけでなく、6カ月点検や1年点検があります。オイルやタイヤ交換など一般整備もあります。
加えて、400台を超える自社所有レンタカーの定期点検整備、月間50台を超える販売車両の納車前整備…実に、雑多な仕事に日々追われます。
そこで繁忙期と閑散期の差を見ます(表4)。
この差が、ほぼ車検業務だけに費やされていると考えていいでしょう。
そうすると、559台の車検増加分を1074時間で処理したことになります。1台当たり1.9時間。わずか2時間足らずで法定点検、整備、検査を実施しているわけです。
1台当たり粗利が43千円と高いのは、おそらく整備の多い車ほど、深夜に作業しているからでしょう。 生産性を見てびっくりしました。1時間当たり実に22千円の付加価値を上げています。
整備士のポテンシャルの高さに驚きます。店長は大喜びです。しかし、当の整備士にとっては目が回る忙しさ。それでも足りず残業時間を増やさざるを得ない、ブラック職場そのものです。
表5をご覧ください。
整備士22人のうち、昨年3月は12人が残業100時間を超えました。最も残業した整備士は平塚店で151時間。
働き方改革関連法で、時間外労働の上限が、いよいよ今年4月から中小企業にも適用されます。罰則を伴う厳しい義務です。
当社も就業ルールの改定、残業の分散化、休暇の強制取得など遵守するよう取り組んでいますが、特に、季節変動が大きく専門性の高い役務型商品については困難を感じています。
今年は何としても100時間以上の残業を一掃したい。そのためにできることから手を打っています。整備士の増員、変形労働制へのシフト、キャンペーン期間の延長もこの一環です。
それでだめなら、目標の下方修正も止むなし、と腹をくくっています。